【リク5】中学校の同窓会

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「そうだな。あたしだって谷川と噂になるなんて御免だ」 ふん、と鼻を鳴らして谷川の1m後ろを歩く。 隣に並んで歩くのだって御免だ。 そんなあたしの様子を見て、谷川は小さく舌打ちした。 「そこまで嫌かよ」 「いやいや、先に突き放してきたのはそっちだからな!?あたしは何も悪くないと思うんだけど!」 「…………チ」 谷川は何も言い返さない代わりに、再度舌打ちした。 歩くこと10分。 最寄りの駅前にやって来た。 そういえば、どこに向かっているのか……何をするのか全然聞いてない。 「なあ、谷川」 「なんだよ」 「どこに行こうとしてるんだ?」 「今更かよ」 「だってずっと不機嫌そうな顔してるから、聞きづらいだろ」 「…………別に不機嫌ではねぇ」 「だったらもうちょっと愛想よくしろよ」 だからモテないんだぞお前。 「……最近できた、パンケーキの店」 「…………パンケーキ?」 なにそれ? あたしが首を傾げていると、谷川は立ち止まってこちらを見た。 「話題になってる店だぞ。知らねぇの?」 「うん」 「マジかよ。お前それでも女子か」 「失礼だな。で、そのパンケーキの店に向かってるのか?」 「……………そうだよ」 「もしかして、パンケーキ食べたいとか?」 「…………」 谷川は答えない。どうやらその通りらしい。 何だよ可愛いところあるじゃん。 「……ニヤニヤすんな気色悪いな!男1人だと入りにくいんだよ!」 「まあ、そうだよな」 「お前だったら女子っぽくねぇし、あんまりカップルに見えないだろうと思って!」 「ホント失礼だなお前」 あたしを女友達として連れて行きたいらしい。 谷川は眉間にしわを寄せると、それに…と言いにくそうに言葉を繋げた。 「……この前の礼も兼ねて」 「………礼?」 はて、と考える。 谷川に礼を言われるようなことあったっけ。 というかあったとしても、この男にお礼なんて言われるわけないなんて思ってしまう。 「…………っ、ほら、とっとと行くぞ!すぐそこだから!」 谷川はぷいっと前を向くと、スタスタと足早に歩いていった。 「おい、足早いって」 あたしは小走りになりながら谷川を追いかけた。 店は、相当繁盛しているのか客が多かった。 圧倒的に女性客が多く、男性がちらほらとカップルで訪れている。 やっぱり、男単体では来にくいんだろうな。
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