【リク5】中学校の同窓会

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谷川はもどかしそうにガシガシと頭を掻いた。 「…この前の、平峯のことだっつの」 苛立った様子で、しかし照れ臭そうに言った。 目線は俺の方に向いてるのではなく、テーブルのどこか一点を睨みつけている。 「…………ああ、あのことか!」 谷川が無惨にも平峯さんにフラれたあの話ね。 「…もしかして、あたしがちょっぴり手助けしたことに対しての礼か?」 「いちいち言うな」 谷川はこちらを見ない。 …なるほどそういうことだったか。 別にあれは、谷川を思ってやったんじゃなくて平峯さんが可哀想だったからで… まあそうだとしても、 「律儀だなぁ…」 「うるせーな!俺は借りを作るのが嫌いなんだよ!特にお前みたいな完璧人間にはな!」 「完璧人間って…」 「頭もいい、運動もできる、顔もいい。でも嫌味を言うわけでもない。完璧で、気持ち悪い」 「褒められてるんだかけなされてるんだか…」 「そんな奴に借りを作るのは嫌だ」 「嫌なのか?」 「なんつーか……嫌なんだよ!」 はあ。よく分からない。 谷川自身も、上手く言葉で説明できないみたいだ。語彙力の問題だろうか。 「とにかく、そういうわけだ」 「でも借りを返すにも、あたしの好みについて下調べが足りなかったよな」 「う……うるせー!こういうのは気持ちの問題なんだよ!」 つまり自己満足、と。 それは谷川も分かっているらしい。 っていうか、あたしの時間を奪って無理矢理連れて来た時点で破綻してるような。 それでも、一応お礼をしようと女子に人気そうな場所を選んだんだな… その事実が分かっただけで、先程まで谷川に感じていた不信感もなくなった。 ただ意地っ張りの、根はいい奴だ。 「…ふ、」 自然と笑みがこぼれた。 その反応に、谷川は自分が笑われてると思ったらしい。 不快そうに「笑うなよ」と言った。 「でも…なんか、急に可愛く見えてきて」 「かわ………!?男にそんなこと言うんじゃねーよ気色悪いな!」 「ならもっと言ってやる。可愛いなー可愛いよ谷川」 嫌がらせのつもりで可愛いを連呼する。 ふん、これぐらいの嫌がらせならそれこそ可愛いもんだろ。 「やめろ!」 谷川は本気で嫌らしい。すごく険悪な表情だ。 そこで、店員さんが注文していた品を持ってきた。
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