【リク5】中学校の同窓会

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谷川と2人きりなんて心配でしかなかったが、なんだかんだ楽しく過ごせた。 帰り道、谷川と途中まで一緒に帰る。 「いやー笑った笑った」 「そうかよ。連れてくんじゃなかった」 谷川はずっと仏頂面だ。 けれど、少し…ほんの少しだけ、表情が柔らかくなったような……気がしないでもない。 「そう言うなよー」 すっかり友達のようなノリで、あたしは谷川の肩に腕を回した。 「うわっ、何だよ近づくな」 「酷いなぁ。一緒に食べに行った仲だろ」 そう言いつつも、あたしはすぐに谷川から離れる。 こういう反応も面白いから、ついついやってしまう。 「どんな仲だよ。もうぜってーお前なんて誘わねぇ」 「え、次も誘ってくれる予定だったの?」 「ち……ちげぇよ!!何でそうなんだよ!」 谷川は憤慨だ、とでも言わんばかりに唾をまき散らしながら声を上げた。 そんなに否定しなくても。 「でもさぁ谷川」 すぐそこの曲がり角で、あたしたちは別れる。 その前に言っておきたいことがあったため、あたしは横から谷川の顔を覗き込んだ。 「今日はありがとう。谷川って嫌な奴だって思ってたけど、案外律儀で良い奴なんだな」 思ったより近距離で、目の前にある谷川の顔は呆然とこちらを見る。 そしてすぐにハッと我に返ると、猫のように飛び退いた。 「あ…あ…、案外が余計なんだよバーカ!!」 谷川は腕で顔を半分ほど隠す。 「なにその小学生みたいな反応」 「お前が変なことするからだろ!」 「変なことって何だよ。顔赤いぞ」 「うるせー見るな!」 「そんなこと言われても…」 谷川はあたしから逃げるように…っていうか逃げた。 分かれ道、自身の帰路の方へ走って行く。 「あ、おい谷川!」 「何だよ!俺は帰る!」 あ…一応立ち止まってはくれるんだ… 谷川は首だけこちらに向けた。 「また明日な!」 「……っ!」 谷川は無言でプイッと顔を背けてしまった。 何だあれ感じ悪いな。 なんて思いながら、あたしも帰ろうとすると… 「じゃーな!」 遠くの方で、谷川の声がした。 分かれ道の方を見ると、遥か遠く、米粒ほどの大きさになった谷川がこちらを見ていた。 「……遠すぎるだろ」 けれど何だか嬉しくて、あたしはブンブンと両手で手を振った。
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