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彼女にとって、正確な人数を知る事が重要、という訳では無かった。
「アルニカよ」
ヴォルケは少女の名を静かに呼ぶ。
何処か不機嫌そうに彼女が目線だけをこちらへ寄越した事を確認し、続ける。
「今年こそは“『魔精』として”、自分に相応しい人間のパートナーを見つけるつもりなのじゃろう?」
「今年こそは――確かにそう思っていたけれども。実際に“その日”を迎えると、心境も変わってくるな」
「と、言うと?」
「これまで数年間と同じ結果が待っている、そう思えてしまう」
「“予感”と“現実”は違うものじゃろうて。まだその時を迎えた訳ではあるまい」
「今までは同じだったんだ。あたしだって、最初から諦めたくなどは無いが、どうしても――な」
アルニカは視線を伏せて言う。
言葉とは裏腹に、既に諦めているような面持ちだった。
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