『想い人』

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   気付けば、もうすぐ十五分になろうとしていた。目の前の駅から、もうすぐ最終の電車が到着するというアナウンスが聞こえてくる。  俺はずっと手に持っていたコーヒーの缶をゴミ箱に投げ捨て、ゆっくりとその場に立ち上がった。 「ありがとうございます。お陰で時間を潰すことができました」 「いいえ。お礼を言われることでは御座いません。妹によろしく伝えておいてください」 「はい。そうします」  俺は最後に軽く頭を下げると、その場を立ち去る。  こんな気持ちで妹の墓参りに行くのは初めてだ。いつもはもっと暗い、落ち込んだ気分で訪れていたからな。そのことを謝っておかないと。  さて、もたもたしている時間はないぞ。俺は二人分の人生を生きなければならないのだから。  そして俺はその電車に足を踏み入れた。             【END】
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