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「来たわね。裕子」と母が言う。
「うん。呼ばれたから」と私はぶっきらぼうに応えた。
見ると、母の表情はどこか重い。だが、それは怒っているからというわけではなさそうだった。
数秒の短い沈黙が続く。しばらくしてから、ようやく母が口を開いた。
「裕子、佳人(よしと)くんを覚えてる?」
「佳人? ……ああ。佳くんのことね」
佳人こと佳くん。私より二つ年上の幼馴染みだ。高校卒業後、どこかの大学に進学したらしい。その大学はどこなのか、彼女である私に打ち明けてくれなかったし、なんとメアドすら教えてくれなかったので連絡もできない。
音信不通のまま一年が過ぎ、いつしか私は高校二年生。しかも一ヶ月後には三年生になるときた。
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