はなびらの宴

『想い人』

　
「妹は幸せじゃなかったんすよ。両親の優しさに触れることもできず、死んでしまった」

　どうして俺はこんな話を見知らぬ女性なんかにしているんだろうか。

　適当な話題を出して、せめて死ぬ前くらい楽しい思いができたらよかったのに、これでは意味がない。

「お兄さんであるあなたは、どうでしたか？」

「はい？」

　唐突な女性からの質問に、思わず素っ頓狂な声をあげる。

「妹にとってお兄さんであるあなたも、両親と同じように畏怖の存在でしたか？」

　妹にとっての俺。

　妹にとって俺はどんな存在でいられただろう。数少ない家族だと思ってくれていただろうか。それとも両親と同じように恐怖の対象だったろうか。