『想い人』

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   俺は妹じゃないから、詳しいことまでは言えない。  でも……。 「たぶん、あいつは俺のこと家族だと思っていてくれていたと思います。だっていつも俺のこと『お兄ちゃん』って笑顔で呼んでくれていたんですから……」  笑顔で『お兄ちゃん』と呼んでくれる妹が好きだった。  辛い環境のなかでも、ぐじけない妹の姿が誇らしかった。  たまに涙を流すこともあったけど、必ず俺の隣で泣いてくれることに絆を感じた。 「でも、あいつはもういないんです。どこを探しても見付からないんです」  四年前に死んでしまったのだから。一緒に家を抜け出そうと決めた前日に殺されたのだから。  結局、残ったのは俺一人だった。
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