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「あ゙?おい、お前。何しようと…」 ぐずぐずしてる暇はなかった…! 内心後悔しつつも、慌てて窓の外に飛び出す。 借りた部屋が1階で心底よかったと思う。 「おいこらぁ!待たんかい!!」 怒鳴り声を背中で受けながら、とりあえずこの場から離れようとひたすら走る。 後ろから足音が聞こえる。 荒々しい足音は複数聞こえ、全員で私を追い掛けているのが分かった。 分かっても焦るだけで、全然嬉しくないっ! 「お嬢ちゃん、ちょお止まりぃや!」 優しそうな声音を使って荒々しい口調で叫ぶおじさんが、アンバランスすぎて怖い。 「わ、私、あの家とは、関係ないんですよーっ!!」 「おいぃ!お前、それ嘘やろがぁ!」 息継ぎの合間を縫って嘘を吐けば、最初に私を見つけたおじさんがすぐに否定する。 けど、ここで認めたらダメだ! もう言い訳するネタが思い付かないから…! 「あれ、友達の家なんです…っ!」 「あ゙あ゙?じゃあ、なんでお前しか居らへんでん!」 思いがけず痛いところをつかれて、ぐっ、と言葉に詰まる。 「…と、とにかくっ。私は、関係ありません、ってば!」 「……お嬢ちゃん、さっきから黙って話聞かせて貰っとったけどな。違う、言うなら、証拠見してもらおか」 「しょ、証、拠!?」 今まで黙りを決め込んでいた如何にも、という雰囲気の男がすらすらと語る。 …こういうことに慣れてるんだろうな。 証拠っていっても、何を出せば… 生徒手帳?いや、今は他人の振りしてるからダメか。 保険証…とかも同じか。 ずっと全力疾走に近いかたちで走っているから、体が軋んできた。 毎日働いてるお陰で、体力は備わってるが、走るとなるとそれは殆ど役に立たない。 先に足が疲れてくる。 普段使わない部位の筋肉を使うと、こうも疲れるものなのだろうか。 肺が痛い。 頭も上手く回らなくなってきた。 死にもの狂いってこんな感じかな、なんて考えながらひたすら足を動かす。 後ろからはまだ怒号が飛んで来る。 とりあえず、大通りに出てから―― そう考えて角を曲がった。
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