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「あっ!もしもし!美緒(ミオ)ちゃん!よかったーっ。もうお仕事に行っちゃって出てくれないかと思ったわー…」 耳元でキィキィと年甲斐もなくさえずるのは母だ。 この人は常にテンションを高緯度に保っている。 産まれたときから一緒にいるから、鬱陶しいとも何も感じなかったけれど。 「何?これから行こうとしてたんだけど…」 あまり時間もないので歩きながら通話をすることにし、太陽に背を向けて歩き出す。 「あのね、今からお家に帰れる?」 「え?」 じとり、と太陽光が直撃する背中が汗ばみ始める。 携帯電話で会話しながら炎天下を歩くというのは、意外に体力を消耗する。 耳におしあてた携帯でさえ、べたべたとする不快感を生む。 「ちょーっと、お母さん美緒ちゃんに会いたいなーって」 えへ、と茶目っ気たっぷりに言う母の言葉はあまり信用できない。 …というか、それが普通でしょ? 「駄目だよ。もう、あんまり時間ないから」
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