第一話 帰って来た幼なじみ

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慌てて横の棚にしがみついた。 心臓がバクバク鳴っていて、きっと血圧も上昇しているに違いない。 勢い良く棚にしがみついたせいで、並べてあったティッシュ箱が数個落ちてしまった。 「相変わらず、女嫌いは治ってないのね」 過敏な反応を見せた俺に、終始呆れ顔のコイツは、落ちたティッシュ箱をわざわざ拾い始めた。 「お前なぁ!短い春休みの間で治ったら奇跡だぞっ!」 「確かに、それもそうね」 拾い上げたティッシュ箱をもとの棚に戻すと、顔面蒼白中の俺に真顔で向き直った。 コイツは同じクラスの、福島有紗(ふくしまありさ)。 いつもの眠そうな目をし、時にはボーっとしていて、とてもじゃないが、何を考えているかわからない人間だ。 この変わった性格のせいで友達はいないらしい。 だが、ひょんな事に、俺が女嫌いと知ってしまった福島は、何故か俺にだけは自ら話しかけてくるようになった。 それが、興味本位なのかすらもわからないままだが……。 「アレはしてないから大丈夫でしょ?それとも、して欲しいの?」 俺の最大の弱点まで知っている福島は、口元に手を寄せて意地悪な笑みを見せた。
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