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「あーもう、いい!とにかく来い!」
世間知らずの福島に1から教えるため、俺は腕を引いて魚コーナーへと連れ出した。
近くにあったビニール袋を見つけると、すかさず何枚か取り出し、福島のカゴにいる魚を袋の中にしまい込んでやった。
「いいか?剥き出しで売られている魚は、こうして袋に入れてから、カゴに入れるんだぞ?」
袋にしまってやった魚を改めてカゴに入れてやると、当の福島はうんともすんとも反応しない。
「……えっと」
何か気を悪くするような事でもしたか?
本気で心配し始めると、福島はやっと小さく口を開いた。
「……ありがとう。今まで買い物なんてした事無かったから、わからなかったわ」
「は?親と一緒に来たりしなかったのか?」
「私、親と話さないから」
どうやら、福島の思い出したくない記憶を、偶々掘り返してしまったらしい。
重々しい空気が二人の間に漂う。
別の話題に触れようと考えていると、福島が今度は逆に俺の腕を軽く引っ張った。
「あと、野菜売り場ってどこ?」
「ああ、それならあっちだな」
野菜コーナーまで案内している間、後ろから着いてきている福島をチラリと見ると、相変わらず無表情のままだ。
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