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「誰が何ですって?それと、何遍言わせるつもりかしら?私の事は麻子さんと呼びなさいって言ったでしょ?それとも、アレをやって欲しいが為に、ワザと怒らせてるの?」
「いえ、何でもありません。ごめんなさい。母ちゃ、……麻子さん」
「そう、わかればいいのよ。じゃあ、買い出しよろしくね」
母ちゃん異、麻子さんは手に持っていた買い出しのメモを俺に押し付けると、そそくさと部屋から出て行ってた。
「くっそ~!脅しやがって!」
麻子さんの足音が遠ざかったのを確認してから、俺は押し殺していた気持ちをここに来て吐き出した。
昔から口喧嘩をしても麻子さんには勝てず、最終的に圧力で負けるのは男である俺の方だ。
……多分、いや、絶対に。
弱みを握られている限り、麻子さんに勝てる日は来ないだろう。
先の事を考えている内に気が重くなり、肩をガックリと落として、溜め息を一つ吐き出した。
「……仕方がない。買い出しに行って来るか」
ここで悲しみに暮れていたら、また麻子さんに何言われるか分かったもんじゃない。
渡されたメモをズボンのポケットに突っ込み、ボサボサの頭をかきながら立ち上がった。
当然、無惨に電源を落とされてしまったゲームに、後ろ髪を惹かれる思いもしたが、未練を断ち切る為に部屋を後にした。
☆
外に出ると、薄暗かった自分の部屋とは違い、昼間の眩い日差しが嫌ってほど照りつけてくる。
季節は春とだけあってか、外の空気は暖かく、過ごしやすい気温だった。
照りつける日差しに目を細めながらも、俺は近所のスーパーに向けて足を進めた。
家からスーパーまでは徒歩で行けるほど近く、普段なら自転車を使っているけど、今回は無惨にも消えてしまったゲームの、今後の進め方について考えておきたくって、徒歩という名の気持ちの整理をする時間を選んでみた。
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