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「ねぇ、真人くん!僕の話聞いてるの?」
「え?」
横から竜彦に袖を引っ張られて、はっとなって我に返った。
「え?じゃないよ!全く!」
話を全く聞かなかった真人に、竜彦は頬を膨らませて唇を尖らせた。
その後すぐ少女の方に振り向いたが、もうそこに姿は無かった。
姿がそこに無くても、俺の心音は収まりを知らず、未だに緊張感が全身を縛り付けていた。
今までどんな女を見ても何とも思わなかったのに、こんなのは初めて味わう気持ちだ。
「なに?さっきの子知り合いとかだったの?」
竜彦も少女の存在には気づいていたらしい。
「いや、初対面だけど……」
そこまで口したあと、胸になにか引っかかりを覚えた。
それと同時に、うっすらと記憶で蘇る女の子の面影。
いつもツインテールの髪型をしていた幼なじみの存在だ。
でも、彼女は両親の都合で小学校に上がる前に、この町から出て行ってしまった。
見送った記憶も鮮明ではないが、若干記憶にはある。
麻子さんの話では、今は両親と共にパリで暮らしているとか言ってたな。
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