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ホロキーボードで何かを打ち込む少年の姿。
その横で眼鏡をかけた女性が、その少年を監視するように、無表情に見つめている。
「あのさー、なんかお菓子とか気のきいたものを用意できないの? 新人」
新人、と呼ばれた女性は少年の耳元へ顔を近づけ告げる。
「そのような甘いものばかり食べていては、甘い甘いおいしい食べ物として魔物に食べられてしまいますよ」
「は?」
少年は、なんだこいつ馬鹿にしてるのか? と思ったがどうやら彼女なりの冗談だったらしく、笑うところですよ? と言いたげに少年に視線を送っている。
「それは冗談で、お母様からお菓子は食べさせないように言われましたから。お菓子はおあずけです博士」
博士と呼ばれた少年は、嫌そうな顔をした。
「博士はやめてくれ、クリスでいい」
「では、クリス。早く作業を終わらせてください。お菓子は私の前で食べなければ自由ですよ」
女性は青い携帯型の端末を腰に付けた袋から取り出す。
「チェック」
女性がそう告げると、端末が時刻を告げた。
「あと10分で終わらせてください。お母様がお待ちですから」
「わかった。新人、お前はテレポータの準備を頼む」
「その必要はありません。お母様がこちらに来ますから」
「そうか」
この会話の合間にも少年は手を休めず作業を進めた。
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