Un capitulo

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「え、ちょっ、ちょ、まっ、んッ!? どして。何で。どこでどういう展開でそうなった!?」  落ち着きをなくした彼にカティアは怪訝な表情をする。 「え。だって私は宗一郎さんを救うために来たんですよ」 「だから何でそういう流れになるんだよ!!」  宗一としては願ったり叶ったりなのだけど、しょせん世間体というものがある。もし会長にでもバレれてしまえば即死コース一直線。同級生に知られれば彼の地位がさらに没落する恐れが。 「あれ。言ってませんでしたかね。厳密には異なりますが私は宗一郎さんと同類なんですよ。実はですね私、タロットナンバー十【運命の輪】の正位置『幸運の到来』と、二十一【太陽】逆位置の『衰退』の御加護を授かっているんです」 「いや俺の話訊いてる?!」 「そういうわけでこれからよろしくお願いしますね」  ニッコリ。 「駄目だ。会話が成り立たないし成立しない!!」 「じゃあ宗一郎さんは私を道の隅っこに捨てると」 「帰宅ぅ! 帰宅を推奨! オリヴィアに!」 「無理ですよ。お金がありませんもの。それに心配無用ですよ。お掃除お洗濯お料理どんとこいです」 「だからそういう問題じゃ――」 「朝ご飯も作りますしお弁当も作りますよ。そして夜は一緒に食卓を囲みましょう」  それならいいかも……と思考し途中で中断。 「うん。あのね。だからそれ以前の問題――」 「私がんばりますね。宗一郎さんのお役に立てるように」 「……あぁもういいや。もうどうにでもなっちゃえ」  これ以上は無駄だと判断。それに、純真無垢、清廉潔白なこの笑顔をどうしても裏切れなかった。あとは宗一の下心が暴走しないよう祈るだけだ。それとバレないように。      ◇  数日。これといった事件も起こらず、いつも通りの平和(宗一にとっては不憫)な数日が経ち、廊下で会長と五ッ葉に挟まれ他愛も無い会話を交わす。 「む。どうした宗一。寝不足か?」 「どうしたの宗一君。目が細いよ」  そんな肉声が左右から耳に入る。
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