Un capitulo

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「女ったらしめ」 「何であいつだけ」 「地獄に堕ちればいいんだ」 「ついには会長に飽き足らず他の女まで」 「一体どこまで欲求不満なんだ」  非難のささやきが凶器となって容赦なく刺さる。 「それでは私はこれで失礼しますね」  カティアは華のような匂いと宗一を敵陣の真っ只中に残して、律儀にも進入口から帰っていった。これぞ四面楚歌。彼の味方は一人もいない。四方八方東西南北を囲まれた。 「ふむ。……宗一、急用が出来た。ちょっと来い」  疑問系ではない。命令形だ。 「宗一君。昼休みなんだから時間は空いてるよね」  同上。 「……はい」  覚悟したくないが腹をくくるしかなかった。  そんなハプニングがあって場所は移り生徒会室。 「さぁ全てを明かしてもらおうか。機械夜宗一」 「隠し事は許しません」  当然だろうがカティアの素性を訊ねられた。 「えっとですね……。彼女はアレですよ。ライトノベルとかでよくいる俺の従妹的ポジションですよ。あははあはは」  そんな冗談が通じるはずもなく、 「もし宗一が消息不明音信不当になったとして、心配する生徒はいるだろうか」 「ごめんなさい。もう失言はしないと心から誓います」 「よろしい。で。あの娘は一体どこの馬の骨なんだ」  馬の骨。随分な言い方だ。 「……信じてくれますか?」  笑われた。 「バカモノ。疑うわけなかろう」 「そうだよ。真実なら信じるよ」 「分かりました。それなら」  そこまで信用されているとなると裏切るわけにはいかない。だから宗一はカティアの口から出た言葉をそのまま伝えた。  なのに、 「宗一君。嘘はいけないって知ってるよね? 怒らないから正直に喋って」 「これ以上俺に何を喋れと!?」  包み隠さず全部話した。オリヴィアやらカティアの素性やらを。もう暴露する秘密はない。それは宗一の“力”を残してだが。  しかもその前フリは絶対怒られるパターン。 「会長さん。これは厳罰が必要ですね」 「俺なにも悪い事してないのに!」  しかし、猜疑心をあらわにする五ッ葉とは打って変わって撫子会長は真剣そのものだった。眼に疑いの色はなく、厳しい顔つきに。 「いや、いい。今回は許す」
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