Un capitulo

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「それでは待ち合わせの場所と時間を決めよう」 「お昼の十一時がいいです。みんなで昼食を取りましょう」  宗一を蚊帳の外に勝手に話が進む。 「ちょ、あの、俺の意見……」 「実はな、生徒会室には会議内容を反芻できるように録音装置が付いているんだ。校内放送のネタに困ったら今回のを流すとしよう」 「…………」  逆らえなくなった。 「以上だ。異存はないな。宗一」 「う、」  会長直々の命令……もとい脅迫で宗一は押し黙るしかなかった。      ◇ 「というわけでこうなりました」  場所は都心。日時は休日。時刻は午前十一時。天候は快晴。人数は四人。気分は複雑。 「見て下さい宗一郎さん。看板がピカピカ光ってますよ」 「会長さん。外出時も制服なんですね」 「ああ。役員は学外で風紀を乱すマネをしないよう、制服着用を義務付けられているからな」  ワヤワヤと、グループを形成している女子二名に横槍が入る。 「こんにちは。宗一郎さんのお友達ですよね。私、カティア・オズノートと申します。よろしくお願いします」  宗一はヒヤヒヤした。だって狼の群れに羊がちょっかいを出したらどうなるかもう堪ったんじゃない。 「うむ。わたしは大和撫子だ。こちらこそよろしく頼む」 「草木ッ原五ッ葉です。宗一君とは昔からの付き合いです」 「よろしくです。仲良くして下さいね」  第一印象が両者とも好評なようで一安心。 「いきなり大乱闘が始まるかと焦った」 「何か言ったか宗一」 「いえ何も!!」  背中に殺気が走って即座否定。 「それでは目的地に向かうとしようか」  初めての集団外出にカティアはやる気持ちが抑えられない模様。全体的にキャピキャピしている。 「会長、向かうと言いましても明確な目的地はありませんよ」 「む。何」 「二人で出かけるのが目的ですので」  つまりここにいる時点で目的は果たしている。
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