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「じゃ、じゃあ、どこに行くの?」
「そうだなぁ……。なぁカティア。どこに行きたい」
「そうですね~」
迷っている。それはそうだ。なんせ日本なんて彼女にとっては未知の世界なのだから。
「海がいいです」
「いや無理です」
遠い。ここから駅を三つ乗り継いで片道五時間だ。
「な、なら……映画というのを一度は観てみたいです」
「ほほぉー」
皆が唸った。
「映画。か」
「映画。ですね」
どうやら意見は一致した。
「よし、それでは、」
「映画館に、」
「行きましょう」
「……うわぁ息ピッタリだ」
そんなこんなでてんやわんやと男子一名その他女子というハーレム集団が人混みを掻き分けながら進行する。映画館に着く合間にもカティアの視線は四方八方に釘付け。そしてこの団体は視線の恰好の的。
「ほれ宗一。先に行け」
到着した矢先に撫子会長に背中を叩かれドアに激突。の直前に自動ドアが宗一を受け入れ中に招き入れた。
「(え――?)」
焦った。
大いに焦った。
戸惑った。困惑した。
「(なん、で、)」
この状況を受け入れられない。
この事実を理解できない。
この現実を黙認できない。
それほどまでに“自動ドアが宗一を感知して開いた”というのはまさに異常だった。
しかし、時間は彼の頭が追いつくのを待ってはくれなかった。
「ここが映画館というものですか。とても大きいですね」
「よし。それでは何を観るとするか」
「ここは私の意見を反映させてもいいでしょうか」
五ッ葉が挙手。
「私は恋――」
「見て下さい宗一郎さん!! ファンタジーものがありますよ私これが観たいです!!」
「…………」
ものっそいハイテンションな大声に上書きされ拍子抜け。
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