Un capitulo

17/33
前へ
/61ページ
次へ
「じゃ、じゃあ、どこに行くの?」 「そうだなぁ……。なぁカティア。どこに行きたい」 「そうですね~」  迷っている。それはそうだ。なんせ日本なんて彼女にとっては未知の世界なのだから。 「海がいいです」 「いや無理です」  遠い。ここから駅を三つ乗り継いで片道五時間だ。 「な、なら……映画というのを一度は観てみたいです」 「ほほぉー」  皆が唸った。 「映画。か」 「映画。ですね」  どうやら意見は一致した。 「よし、それでは、」 「映画館に、」 「行きましょう」 「……うわぁ息ピッタリだ」  そんなこんなでてんやわんやと男子一名その他女子というハーレム集団が人混みを掻き分けながら進行する。映画館に着く合間にもカティアの視線は四方八方に釘付け。そしてこの団体は視線の恰好の的。 「ほれ宗一。先に行け」  到着した矢先に撫子会長に背中を叩かれドアに激突。の直前に自動ドアが宗一を受け入れ中に招き入れた。 「(え――?)」  焦った。  大いに焦った。  戸惑った。困惑した。 「(なん、で、)」  この状況を受け入れられない。  この事実を理解できない。  この現実を黙認できない。  それほどまでに“自動ドアが宗一を感知して開いた”というのはまさに異常だった。  しかし、時間は彼の頭が追いつくのを待ってはくれなかった。 「ここが映画館というものですか。とても大きいですね」 「よし。それでは何を観るとするか」 「ここは私の意見を反映させてもいいでしょうか」  五ッ葉が挙手。 「私は恋――」 「見て下さい宗一郎さん!! ファンタジーものがありますよ私これが観たいです!!」 「…………」  ものっそいハイテンションな大声に上書きされ拍子抜け。
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加