Un capitulo

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「ん、あ、あぁ。それでいいんじゃないか」 「ちょっと宗一君。その娘に甘いんじゃない」 「んなことねぇよ」 「いいえ。別格甘いです」 「よしいいだろう」  食い下がる五ッ葉に食いつく。 「ならここはもう、多数決で雌雄を決するしかないな」 「望むとこ――」  言いかけ、言葉を止める。  だっていつの間にか会長とカティアが宗一の側についていたのだ。多数決という勝負内容にあいて、この時点でもう彼女の敗北は決定。 「わ、分かりました。負けを認めます」 「やったです。ありがとうございます。それでは早く観にいきましょう」  グイッグイッと陽気に宗一の腕を引っ張り楽しそうに嬉しそうに絡みつくカティアに、彼も思わず頬を緩めてしまう。 「あぁ。そうだな」  そう。  簡単に、  容易に、  難なく、  造作もなくトラウマに見切りを付けられるくらいに、開き直れるまでに。 「んじゃその前に定番のポップコーンとジュースでも頼むか」  それぞれの飲料を一手に引け受ける心情で「何飲みたい?」と訊くと全員が口を揃えて、 「スクリュードライバー」 「ウォツカ。ロック」 「リキュール」 「酒飲むなよ!!  てか売ってねぇよここじゃ!! つかそれ以前に未成年がアルコールの要求すんな!! とくに会長!!」  一番非行街道で走ってはいけない人物が爆弾発言をしてしまった。きっとこういう“素”の会長を生徒が目撃してしまえば日頃の威厳とか善行とかが水泡に帰すだろう。
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