Un capitulo

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 帰路、機械夜宗一(からくりやそういち)は幼馴染の草木ヶ原五ツ葉(くさきがはらいつつば)の携帯電話に掛けた生徒会長にお呼ばれされていた。宗一本人、副会長の座に着いている。生徒会最高権力の会長に召集されるには十分な理由だ。  話によると、生徒会質のパソコンが起動しなくなったらしく、彼に助けを求めたいという趣旨のようだ。 「分かりました。それじゃあ今から戻った方がいいですよね」  威厳と貫禄を帯びた音声が電話口から流れる。 『いや、それほど急用という事態でもないんでな。パソコンが使えなくなったのは手痛いが、校内にコンピューターは余るほどあるし、ここ数日にデスクワークをする予定もない。それに、いざ必要となったら生徒会長の権力とそれ相応の妥当な理由をでっち上げれば職員も快くLL教室の使用を許可してくれるだろう』  どうやら会長は職権乱用するらしい。自分の立場を利用するらしい。 『だから余計な心配はいらない。今日は家に帰ってゆっくり休んでくれ』 「なるほど。了解しました。実は俺もUターンするのは気が引けたんですよね」  冗談交じりに話すと、会長も楽しそうに返してくる。 『ふむ、そうか。なんなら今すぐにでも強制召集命令を掛けてもよいぞ?』  あはははと互いに笑いあったのち、電話を切り、持ち主に携帯を返した。彼より頭一つ分小さな女の子、草木ヶ原五ツ葉に。 「会長さんに怒られたの?」  なんというか、幼く可愛らしげな美声だった。思わず身を挺して護りたくなるような華奢な身体。小動物とまではいかないまでも、それなりに小柄な性格をしている。幼い頃から隣にいた彼女は、特別である彼にとって別の意味で特別な存在。 「いや、怒られてはいないな。むしろ頼られてる感じ?」 「宗一君って凄いね。あの会長さんから太鼓判を推されてるなんて」  宗一は軽く受け流した。
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