Un capitulo

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 幾分の時間が過ぎ、上映会場からぞろぞろと人が流れ出てくる。見慣れた四人の姿もあった。 「……思ったよりも面白かったな」 「ですね。特にエターナルフォースブリザードの部分がツボに嵌りました」 「え、一番の魅力は何でも視える『第三の眼(エンティックアイズ)』じゃないですか」 「ちょっと五ッ葉。それは作中でも語られてた通りに禁忌中の禁忌で本来は多用しちゃいけないんだぞ」 「そうだぞ五ッ葉。もしも一日の制約規定行使回数を超えて使ってしまったら失明してしま危険性を含んでいるんだから」  口々に感想を漏らしあう中で、カティアだけがうな垂れていた。 「どうしたカティア。元気がないようだけど」  宗一が顔色を伺う。 「あ、いえ、何でもありません」  弱弱しく、虚弱に、薄く、口角を上げる。  今の今までの変化に気付かぬ者はいなかった。 「む、どうしたカティア。具合でも悪そうだが」 「そうですね。さっきまでのはしゃぎっぷりが嘘のようです」 「いえ。ご心配なさらずに……」 「そう畏まるなカティア。辛い時は辛いって正直に言っていいんだぞ」 「いえ、本当に平気ですので。体調はどこも悪くないです」  本人がそう答えるから誰もそれ以上追究はしなかった。 「ま、日も暮れてきたし。帰る時間には打ってつけか」 「うむ。そうだな。では宗一、カティアを頼んだぞ」 「今日は楽しかったよ。また遊ぼうね」  友情を繋ぎ合った三人は別れ際に手を振り合った。  残ったのは宗一とカティア。 「俺達も帰ろうぜ」 「はい。……あの。宗一郎さん」 「ん?」  もうその名前に慣れたらようで、違和感なく応える。 「手。握ってもいいですか」
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