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「聞き間違い?」
「俺の耳にはカティアを処分するって聞こえたんだが。空耳だよな」
今度は、
「もし事実だったら。どうする」
リアトが、
「あんたを許さない」
激怒した。
「図に乗るなよ小僧!! どの口がほざいている!!」
今までの平淡さから一変、リアト・ハーネストはこの場の誰よりも憤慨した。それこそ、鳴りを潜めていた活火山がとつじょ大噴火を起こすように内に溜まっていたものを外に追い出した。
「カティアを処分する事を許さない? 誰がこうしたと思っているんだ? 誰がこのような結末に追いやったと思っている!!」
彼の発言にはカティアを擁護する気持ちが込められていた。プラス、彼女に最も残酷な選択肢を叩き付けた宗一に対する純粋な怒りも。
「……悪いが俺はあんたの言ってる事が理解できない」
「そうだろうそうだろう。お前は知らずにカティアを傷つけたんだからな。いや、傷つけているんだから」
「だから何言ってるか分か――」
静かに、小さく、冷静に、だけど確実に届く音量で、
「彼女はなんて言ってた?」
投げかける。
「何のためにわざわざお前のところに訪ねてきた? お前はきちんと彼女の話に耳を傾けていたか? そしてお前は彼女に対して何と答えた?」
焦燥。宗一にはそれだけだった。
心の中でリアトの問いかけにゆっくりと自問自答する。
『彼女はなんていった?』
救いに来たと言った。“呪い”を解くとも豪語していた。
『彼女の話に耳を傾けていたか?』
しょうじき半信半疑だった。御伽噺だとも嘲った。
『彼女に対して何と答えた?』
こう返答した。「救われなくてもいい」と。
「…………ふざけんなよ。こんな事で、」
全てを理解した。
全部を、現状を、把握した。
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