Un capitulo

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「お前に補足をしておいてやろう。ここで何もかも知るのはタイミングがいい」  カティア・オズノートは処分される身だった。いや、処分される身になった。その理由は至極簡単単純明快。機械夜宗一が「救われなくてもいい」と告白したから。  彼女のファミリーネーム『オズノート』には、オリヴィアが造った創造物である証とは別にある意味が含まれている。『仕える者』という意が。  本来、『オズノート』家は救済対象となった人間に好意を抱かれるようにオリヴィアが性格、性別、顔、髪、身体を形作り(この時にオズノートに対象への恋愛感情を組み込む)派遣させ、タロットナンバー二十一【太陽】逆位置の『衰退』の効力を以って呪いを解く役目を背負っている。それが彼ら彼女らの唯一の存在理由であり存在意義。  ゆえに、図らずとはいえ、宗一の言葉はカティアから生きる価値、意味を奪った。 「信じるか信じないかの問題ではないし信じろ信じるな以前の問題だ。機械夜宗一、これが現実だ。お前の眼には何が見えている?」  しっかりと、リアトの助言通りに、双眸で、カティアを、見据える。 「カティア……」  そこには、懸命にひたむきに今日を生きようとする少女ではなく、運命にすがりつきながらも翻弄され、自ら死に飛び込もうとしている少女の哀れな姿だった。しかも、よりによって、その元凶がここに微塵の罪悪感を感じることなく立っている。 「ごめん。俺、何も知らなくて、何も知らないのに分かったような事を言って、お前をここまで追い詰めて、いまさら謝罪なんて出来ないかもしれないけど、手遅れかもしれないけど、せめてこれだけは言わせてくれ。――カティア。ごめん」  カティアは涙を拭い、表情を喜色満面に綻ばせた。 「ありがとう御座います宗一郎さん。私は、その気持ちだけで嬉しいです。十分すぎます」  きっと彼女はこのまま滅びの道を選ぶだろう。誰かが止めぬ限り手を取らぬ限り。 「お願いだ。そんな事言わないでくれ。もう一度やり直せないのか。元に戻せないのか」 「それは、……宗一郎さんがそう望むのなら」 「あぁ、頼むよ」
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