Un capitulo

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「う。えぐっ、えぐっ、」  カティアが彼の手からハンカチを受け取り、恨めしそうに赤くなった目頭が覗く。 「ご、ごめんなさい。は、はな、話を続けます」 「これでいいのか俺。泣かせた女の子に謝らせちゃって」と自責の念に駆られる宗一。けれどここで余計な発言をしてしまうと、話が停滞してしまいそうなので流れに身を任せる事に。 「さ、先ほども申しましたが、私の名前は『カティア・オズノート』です。……うぐっ。宗一郎さんのの、“呪い”を解くためにオリヴィアから派遣されて来ました」 「んと、いくつか質問いいかな」  また泣かせないように出来るだけ穏便な声で訊ねる。 「どうぞ」 「オリヴィアって何?」 「えっとですね。オリヴィアの全貌を話すためには、まずはその歴史から話さなければなりませんね」  この世界、地球の人工は約七十億。大半は『平凡』な人間やその平凡の中で優秀な才能を発揮する『特別』な人間が占めている。  しかし、極稀に、生まれながらにして『平凡』に属さなず、『特別』の枠にも納まらない異質に飛び出た才能を有する者が存在する。漫画やフィクションでは彼ら彼女らを『超能力者』と称し、英雄として扱い、神格化するが、現実なんていう残酷な舞台では殆どそんな優遇はない。最悪、人として見られず、人権すら剥奪される。  いつからか、そんな彼らの冷遇に異を唱えた者達が現れた。その過程を経て創設されたのがオリヴィアという組織。  カティアは実に真剣な面持ちで流れるように口を動かしているが、宗一にとっては何が何だかチンプンカンプン。けどまぁ話が長くなるのも面倒なので取りあえず理解したように聞き流す。 「んっと。それじゃ二つ目の質問。どうして俺が呪われた人間だって知ってるの」 「はい。元々オリヴィアというのはですね、魔導師達が集まって自然に出来上がった組織なんです。だからそういう不思議な、不自然な矛盾は魔法で補完できるんです」 「ん??」  彼女の説明には肝心な部分が抜けている。容易に聞き捨てられない用語が。 「その、魔導師って何?」 「はい。魔導師というのはですね。世界に実在する理論では到底片付けられないような『奇跡』や『神秘』を追い求め、手中に収めた人達の総称です」  なんだかもうここから段々と怪しくなってきた。
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