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リュートは、包丁にとにかく魔力で創った防壁をぶつけてなんとかしのいでいる。
それよりも、違和感の正体がようやく分かってきた。
風の包丁。あれくらいの芸当は俺にだってリュートにだって指一本で出来る。問題はその属性だ。
けど、属性云々の前に、あれは十分に屋敷を破壊するレベルの攻撃。
だというのに、この屋敷の内部は壊れても外に出るような壊れかたが一切ない。
そもそも、俺とリュートが屋敷を崩さないくらいに手加減して戦ってたといっても、それでもたったこれだけの損害ですんでる時点で可笑しい。
要約すると、この家こんな頑丈だった?といったところだ。
ためしてみるか……。
「リュート、助けてほしかったら後で俺の言う命令をひとつ聞いてもらうが構わんか?」
「くっ、ふざけるな!貴様の施しなぞ受けてたまるか!!」
「わかった、じゃくたばれ」
「ごめんなさぁぁぁい!!冗談です言ってみたかっただけなんですぅ!だから行かないでええ!びええええん!」
わざとらしく、鼻炎鼻炎と訳のわからない言葉を吐きながら泣き出したリュート。
それじゃ助けてやろう。
俺はゆっくり息を吸い込み、大声を上げる。
「ゴハンですよおおおおおお!!」
「ういっすういっす」
リュートを真横に召還しただけなんだけどね。
「そおおい!」
「そげぶ!」
といっても、対処法はリュートを隣の部屋に叩き込んで、そこへと逃げただけだが。
部屋に入る寸前のところで、風が尻をかすった。
「うわああああああああああ!!ズボンやぶれたああああああああ!!」
壁を巻き込んで見晴らしがよくなった部屋から、様子を伺うと、包丁は青空の覗ける屋敷の窓に向かって飛んでいく。
予想してた通り、包丁は屋敷の壁に当たると、暴風を撒き散らしてようやく止まった。
あちゃー
「あぁ、やっぱこれ結界か」
なんということでしょう。
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