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「いや、結界というより別空間だな。ここ」
さっきまで顔面を覆いながら「うおおおおお!オレの美顔があああ!鼻がぁああん!」とか叫びながら転がっていた、リュートが壁によりかかり、腕を組みながら決め顔でそう言った。
んじゃ、説明よろ。
「ここ、嫁ちゃんが投影した世界なんだ。現実の屋敷を元に、似せて作っただけの空間だよ。そこに俺たちは誘導されてたんだ。当然、この屋敷だけの世界だから、外はない。外がないんだから出れる筈もないし繋がる筈もないし。だから壊せないんだ。ゲーム風に言うなら『見えない壁』だね、破壊不可能オブジェクトみたいな。 と、僕は決め顔でそういった。キリッ」
「説明おつ」
「ま、いんじゃね?外で暴れてめちゃくちゃになるよか。ここなら時間を稼いで酔いを覚ませるわけだし。ということでスピードワゴンはクールに去るぜ」
「おいまてこら。なに一人で逃げようとしてんだ、てめえ」
「いや、だって狙われてるの正八でそ?俺は関係ないじゃん。ないじゃんじゃん」
なんだろう、こいつに正論を言われるとなぜか腹立つ。
正論なだけに何も言い返せない。ぐぬぅ。
「ん?」
なぜ俺が悔しそうな顔をしているのかに疑問を抱いて首をかしげている。
だが、その理由に気がついたようで、リュートは得意気なドヤ顔を向けてくる。
「たちゅけてほちいぃ?」
なにこいつ腹立つ。
「たちゅけてほちいでちゅかぁ?ねえねぇ、たちゅけてほちいのぉぉお?」
「助けろ」
「うわ上から来やがった」
だいたい、神殺しの空間ならお前も逃げらんないだろ。空技も使えないみたいだし。
実際問題、さっきの包丁から逃げるために空間を曲げようとしたら、それすらできなかった。
恐らく、もうこの空間にいるだけで俺たちの魔術的なものは殆ど通用しないと思った方がいい。
産み出せはするが、それが空間に干渉することなら大抵は消されるだろう。
存分に発揮できるのは強化された肉体くらいか。
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