壊れた狼――最後の望み――

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 俺、クリスティーナ=ウェアウルフは怒りに震えていた。 人間共のせいだ。  人間は資源獲得のために俺達の住処である森を荒らす。 それはどうでもいい。 もともと、住処なんかにこだわりはないし、殺されるならそれで構わない。  だが、どうしても我慢できないことが一つだけある。 それは、俺の中の人間のイメージを激しく破壊していくことだ。  正直に言ってしまえば、俺は人間に憧れていた。 というのも、人間と言えば家族だったり友人だったりと、なにかと絆が強い生き物だと思っていたからだ。  俺達ウェアウルフにとって親はただの生みの親でしかなく、友人なんてものは存在しない。 だからこそ、群れる習性を持つこの生き物を、俺は愛していた。  なのに、ここに来るやつらは自分のことばかりだ。 俺に勝てないとわかるや否や仲間を置いて我先にと逃げる。  そんなこんなが続いていたせいか、すっかり人間という存在に幻滅してしまっていた。 それこそ、殺意さえ抱く。
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