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聖と別れて家に帰った
「ただいまぁ」
返事がなかった
買い物でもいったかな?
その時伸びた廊下の丁度一番奥の部屋からカサッと音がした
泥棒?手近な武器は!?
焦った俺は何を思ったのか沙織さんの趣味のテニスのテニスラケットを持った
そろりそろりと奥の部屋に近づいて行き扉の前までやってきた
扉をそっと少しだけ開ける
そこにいたのは泥棒ではなくかなしげに手を合わせる沙織さんの姿があった
その前には仏壇があった
それはいつもの勝ち気な性格とはまるで違う触れてしまえば壊れてしまうガラス細工のような儚さがあった
しばらく見つめているとふいに沙織さんがこっちを向いたその顔には涙のあとがみえた
一瞬の静寂の後
沙織さんはいつもの明るい顔にもどった
「あら、帰ってたの、ごめんなさい気づかなかったわ」
その笑顔は何だかニセモノのような気した
「あの…その仏壇は?」
思い切って聞いてみた
「あぁ、これ…俊哉君を引き取った理由…かな…いずれ話さなきゃいけないって思ってたんだけど…これはね息子なの…俊哉って名前なの」
驚いた、今まで全然気づかなかった、そんな素振りさえ見せなかった
「生きてたら俊哉君と同じくらいの年ね丁度20年前にちょっとね」
話したく無いのだろう言葉を濁した
「あの…無理に話さなくていいです、話したくなったらそれで…
」
「ありがとう」
そういう沙織さんの顔にはうっすら涙が浮かんでいた
その顔をみた瞬間頭の中でフラッシュバックした
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