深夜過ぎ

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彼は缶コーヒーを開けて一口飲む。 「ハヤカは俺のどこを良いと思った?」 ちょっと聞きにくそうな感じで私に問い掛ける彼の視線を感じながらも私は自分の足元を見つめる。 視線を上げるなんて出来なかった。 「ひたむきな所。元カノの事を何年も引きずってしまうような所。苦しくても悲しくてもそれを隠して明るく振舞う所。」 「何か、カッコ悪いじゃん。」 ちょっと不貞腐れたような声で呟く彼に、そんな事ないよと言い返す。 「でも、そんな事言われたのは初めてだ。」 「そうだよね。皆、カッコ良くて男らしくて器用でスマートだって言ってる。」 私はきっと変わってるんだよね、と笑ってみせる。 でも、彼は神妙な顔をして私を見ていた。 「ハヤカ、ごめんな。」
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