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「うーん…」
放課後の教室で、ケータイの画面を睨みながらナオキは唸った。
「さっきから何してんのさ。早く帰ろうよ」
幼なじみにしてクラスメイトのアイコが唸るナオキを急かす。
「いや、マズいんだよ」
「何が?」
「イベント用の短編小説を書かなきゃいけないんだ。今日の夜中までに」
「へー」
「へー、って何だよ。興味なさそうだな」
「ないよ。早く帰ろ」
「いや、ちょっと待って!」
そそくさと帰り支度を整え始めたアイコを、あわあわとナオキが引き止める。
「いやもう、小説のネタがなくて困ってるんだよ。何かアイデアを頂けませんでしょうかアイコ様」
「苦しゅうない。帰ろ」
「いやごめん、少し一緒に苦しんでお願い!」
教室には、すでにナオキとアイコしか残っていない。
あからさまに面倒くさそうな顔をしながらも、アイコは懇願するナオキに向き直った。
「んもう、仕方ないなぁ。なに?小説のストーリーを考えてあげたらいいの?」
呆れた表情のアイコに聞かれ、ナオキはブンブンと首を縦に二往復させた。
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