第12話 ゲームの終わり

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何分か見つめ合っただろうか 数秒だったかもしれない それはきっと2人にも分からない 時間の感覚など麻痺していたんだろう いや、きっと五感だけが働いていたのだろう 目の前の彼だけを感じるために しばらくすると彼は顔をくしゃりと崩して笑い 「ありがとう。」 そう言って、机の上で祈るように組んでいた私の手を両手でそっと包んだ。 大きな私の手さえもスッポリとおさまる彼の手が少し震えていた。 噛み締めていた口唇をほどき、微笑むと、彼の手に力がこもったのが分かった。 そうして彼はもう一度、ありがとうと言った。
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