始まり

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昼休みの教室。 4月の半ば春の西日の差す窓際の1番後ろの席。 私はここで昼寝をするのが大好きだ。 その日は父が夢に出てきた。 「私も吹いてみた~い!」 「おっ!やってみるか?よし教えてやる!」 10年前の私と父。 それは父が大事にしていた2段式になったハーモニカだ。 サザンオールスターズが大好きだった父がよく吹いていたのが『夕陽にわかれをつげて』と言う曲だ。 歌が始まる前のイントロでハーモニカを吹くような音が入っていて、父はよくそのパートを吹いていて当事、車でよく聴いてたCDと全く同じフレーズを吹く父に子供ながらに感動をしていた。 そのフレーズを私がマスターして間もなく父は事故で他界した。 母と私と妹が長野に嫁いだ母の友人が出産したお祝いとかで泊まりがけで遊びに行ってる時に七里ヶ浜にサーフィンしに行くと母の所に来ていたメールが最後の言葉だったそうだ。 戸塚と鎌倉の間の辺りで飛ばし過ぎた大型トラックがカーブで横転して車4台が巻き込まれて父ともう1人女性が亡くなった。 車には折れたサーフボードといつも積みっぱなしのギターとハーモニカが残っていた。
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