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「お前らいいかげんにしろよ」
彼はそう言っていがみあっている二人の襟首をぐいっと引っ張って引き離した。
「ぐえっ!」
まるで子犬の首根っこを掴むように安々と引き離され、二人はその場で咳き込んだ。
「ちょっ!何するんだよ、フィル」
「お前たちがくだらないことで言いあってるからだ」
「くだらないってオイラたちには結構重要なんだけど?」
レイジーがそういうと彼はちらりとシャルディを一瞥した。
「あんた、たいした女だな」
「は?」
「まぁ、お頭のセンスが悪いとは思わないが…たいして美人でもスタイルがいいわけでもないのにやたらと男を惹きつけるのは不思議なもんだな」
「ちょっと!それって嫌味!?」
「別に。思ったことを言ったまでだ。この世には思った以上にモノズキが多いってことなんだろうな…」
「失礼ね!」
「そうだよ、フィル。モノズキなんて失礼な。確かにシャルディは美人ではないけど、リスザルみたいで可愛いだろう?」
「ぷっ!リスザル…ね」
フィリップは思わず噴き出す。
「フォローになってないわよ!何よ、リスザルって!」
シャルディはキーっと吠えるとエドワードの頭をばしんと平手打ちし、頬を膨らます。
―なるほど、確かにリスザルっぽいちゃあリスザルっぽいか。
「いたっ!暴力は良くないよ、シャルディ」
「エディが余計なこというからよ」
「まぁ、そんなことはどうでもいい。港に着いたんだ、下船する準備はできてるのか?」
フィリップは笑いを押し殺しながらそう言った。
シャルディはその言葉を受けてぱあっと表情を明るくすると途端にご機嫌になる。
実は彼女の家はシリアから少し内陸に行ったマデルンという田舎町にあり、今回は彼女の里帰りも兼ねてシリアに立ち寄ったというわけである。
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