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紺碧の空、透き通るようなコバルトブルーの海と白亜に染められた街並み。
青と白との調和が美しい街、首都・チュブエル。
そのチュブエルの市街の中心には王族が住まう白亜の城がそびえたっている。
通称サマル宮殿と呼ばれ、国王を初めとする王族がいっせいに暮らしている居城だ。
この日、そんな宮殿の一室。
サマル国王の第三王妃であるアナスタシアの居室を一人の青年が訪ねた。
コンコン
「ターシャ様」
「はいりなさい」
静まり返った部屋にノックの音が響き、ゆっくりと扉の向こうから煌びやかなお仕着せに身を包んだ美青年が姿を現した。
彼はにこやかな笑顔を浮かべているがどことなく喰えない雰囲気を漂わせている。
「イヴァン?」
部屋の中から艶やかな女の声が響き、ソファにゆったりと身を預けていた金髪の女性が振り返った。
ぱっちりした青い大きな瞳に、形の良い唇、そして端正な顔立ち。
抜群のスタイルと年齢を感じさせない美貌の持ち主である彼女こそ、ターシャこと第三王妃のアナスタシアである。
「何かあったの?」
「本日はターシャ様のお喜びになられる話題を持って参りました」
イヴァンと呼ばれた青年は彼女のそばによると一礼してにこやかな表情を崩さずに言った。
彼は彼女が嫁いでくる前からの侍従であり、弟のような存在で今や彼女のよき理解者だった。
「一体何かしら?」
心なしかアナスタシアの声が弾む。
「実はエドワード王子の行方がわかるかもしれません」
「それは本当!?」
彼女はイヴァンに喰いつかんばかりの勢いで身を乗り出した。
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