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エドワードというのは彼女とサマル国王の間にできた唯一の息子のことである。
ちなみに彼はこの国の第七王子にあたる。
だが、そんな彼は三年も前に突如として城から姿を消した。
それからアナスタシアは配下のものを使いエドワードの行方を捜させていたのだが、手掛かりすらつかめず何の情報も得られていなかったのである。
溺愛する息子だけに一刻も早く行方を知りたいのだが、なかなかうまくいかないものだ。
そんな折、イヴァンがもたらした報告は喉から手が出るほど待ちわびた知らせだった。
たとえどんなに小さな手がかりの一つでも。
「それで!?それで何がわかったの?」
アナスタシアの瞳が爛々と輝く。
「あの子は元気にしてるかしら!今頃どんなに成長しているかしら。早く会いたいわ!!」
逸る気持ちを抑えながらもまくしたてるアナスタシアを横目にイヴァンは淡々と言った。
「ターシャ様、そう興奮なさらないでください。あくまで私が得たのは『可能性』でしかありませんから」
「それでも早く知りたいわ!」
彼女はそういってイヴァンにすがりつくようにまくしたてる。
「エドワード王子ですが…調べの者によると半年ほど前にシリアという町でエドワード王子らしき人物の目撃情報が複数寄せられたそうです」
「シリア?」
「海賊船なども秘密裏に停泊する大きな港町で、ここから南へ馬車で半日ほどのところにあります」
「港町?どうしてそんなところで??」
あまりにも意外な答えにアナスタシアは目を丸くした。
エドワードと港町、どう考えてもしっくりこないのだ。
「実は…海賊船に乗っていたと言う情報もありまして」
「海賊船に?まさか!あの子、海賊に誘拐されたんじゃ…!!」
アナスタシアの表情がみるみるうちに青ざめた。
「いえ、そうではなく…」
「それ以外に考えられないじゃない!」
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