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「ターシャ様、落ち着いて聞いてください。海賊が人をさらうならわざわざ男をさらうとも思えませんし」
「そんなのわからないでしょう!エディはそこらへんの女の子よりもよっぽど可愛いもの!」
「だとしても。私だったら男なんてさらいませんね」
「それはあなたが女好きだからじゃないの?」
「失礼な。そうではありません。いくらか弱いとしても男なら力もありますし、体だって大きい。無理をして男をさらうより、小柄で力のない女性を狙った方が事は簡単ですから」
「でも…」
「万が一、ターシャ様が言うようにさらわれたとするならばとっくにどこかの国に売られているでしょうね。エドワード王子は美しいですから高値で売れることでしょう。その海賊が男色だったならば話は別かもしれませんが」
「なんてこと!」
アナスタシアはますます顔を青くして唇を震わせた。
「わたしの大事なエディが…!」
「しかし…先ほどから申し上げています通り、さらわれたという線は薄いかと」
「じゃあどうしてあの子が海賊船なんかに?」
「これは私の推測ですが、エドワード王子自身が海賊になられたのではないかと」
「海賊に?」
「はい」
どうやらアナスタシアはこの可能性を一切考えていなかったらしく、信じられないと言う顔だ。
「まさか!あの子が海賊なんて…!」
アナスタシアは笑い飛ばしてから少し、考え込んだ。
「確かに海賊服は似合う…!似合うわ…!」
どうやら彼女はエドワードの海賊姿を想像していたらしい。
アナスタシアはもだえ、頬を緩ませた。
―全く、相変わらずの親バカっぷりだ。
イヴァンは半ば呆れながらもいつものことと、ため息をついた。
「そりゃあもう、大変お似合いになることでしょうね」
「でしょ?でも!!それが本当だとすれば王家の人間としてあるまじきことね」
そうはいいながらも彼女の表情は全然あるまじきこととは思ってなさそうだ。
むしろちょっと誇らしげにさえ見える。
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