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「ええ。さすがはターシャ様のご子息です」
「そう?」
彼女はふふふっと笑った。
まさにこの親にしてこの子あり、といった感じだ。
エドワードは昔から並はずれた好奇心の持ち主で、行動力もあり、王家でも有名な悪戯っ子だった。
抑圧されることを嫌い、それはもう手がつけられないくらい奔放に育ったのだ。
ここらへんは母親の性格が大いに関係しているだろう。
「あの子ったらわたしに似て自由人だから。困ったものねぇ」
「ええ、まったくですね」
王家の一員ともあろう者が法律に反して海賊行為に走ったとなれば忌々しき事態だが、彼女はたいして問題にしていないらしい。
あるまじきだの、困っただのと言っているのはあくまで口だけである。
結局、可愛い息子が戻ってくれさえすれば何をしていても彼女にとってたいした問題ではないのだ。
「それでその海賊船の行方はつかめたの?」
「いえ、それはまだ…。しかし、もう一つ、気になる報告が」
「気になる報告?」
アナスタシアは首をかしげた。
「実はエドワード王子がシリアで目撃されていたのと同じ頃、アンドリュー王子もその辺りで目撃されていまして」
「どうしてアンドリューが?」
アンドリューというのは第四王妃であるエリサの息子でエドワードの異母弟だ。
エリサ王妃はあまり好きではないが(むしろ自分以外の王妃は嫌いなのだが)、アンドリュー自体は可愛らしくて優しい好青年である。
「どうも気になるのです。ここから半日も離れた港町にどうしてアンドリュー王子がいたのでしょうか?王子ともあろうお方がそんな田舎街に用事などあるとは思えません」
「そうね。確かに偶然にしては出来過ぎている気もするわ」
「もしかしたらアンドリュー王子はエドワード王子と連絡を取っていたのではないでしょうか?」
「何のために?」
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