始まり

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ラフができたころ、事務所の扉が開く。 1LDKの事務所で、どこで何をやっているのかなんて音で分かる。 多分、紗彩さんが帰ってきたのだろう。 「お帰りなさい、紗彩さん。…どうかしたんですか?」 私は笑顔で出迎える。 でも、紗彩さんはどこか浮かない顔をしている。 私は心配で、聞く。 「……ごめんね、咲夜。ここ、閉じるから。」 「え!?」 あまりに突然のことに、私は驚く。 仕事はないわけじゃない。 今日だって、この間仕上げたイラストを届けに行ったはずだけど… 「この間私、手が痺れるって言ってたでしょ?今日病院行ってきたの。」 紗彩さんは、左手の荷物を置くと、私に右手を見せてきた。 特に変なところはなさそうに見える。 「別に、悪いところはなさそうですけど……」
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