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まだ早い時間なので人気の無い広いロビーを見渡しながらフロントの前にある呼び鈴を鳴らすと、奥から清潔そうな白シャツを着た童顔の爽やかな青年が出て来た。
人受けの良さそうな笑みを浮かべながら天然パーマなのだろう短い茶髪を弄る姿は何処か可愛らしく見える。
「こんな早い時間に生徒さんが来るなんて珍しいね。もしかして新入生かな?」
「はい、今日からお世話になる東雲 昶といいます」
「ん?もしかして君が新入生で唯一個室を貰った子か!噂は聞いてるよ?僕は白星 時雨、この寮の管理人だよ」
「白星さんですね。今日からヨロシクお願いします」
「君みたいな礼儀正しい子が来るなんて嬉しいよ。えっと…これが、部屋の鍵だね。マスターとスペア、どちらも渡しておくね」
「ありがとうございます」
俺は微笑みながら時雨に手渡されたカードキーを受け取り部屋の番号を確認していると、入口の方から走ってくる気配を感じ振り向く。
そこには先ほどまで一緒に居た菖蒲と遼が居たのだが、一人は茶髪だったので首を傾げるといきなり抱き着かれ目を白黒させてしまう。
「どうっすか!?菖蒲達に教わって変装したんっす」
「猛だったのか…髪色だけで随分変わるな」
「俺と藤は~どうとでもごまかせるけど~猛の髪だけは目立つからね~?」
俺よりも身長が少し高い猛に抱き着かれ倒れそうになるも、直ぐに首を捕まれ菖蒲に引き剥がされては拗ねたように唇を尖らせている。
その間にも遼は管理人である時雨と仲良くなったようで菖蒲と猛の分のカードキーを受け取ると、手際良く手渡しては今度お茶をしようと時雨と約束してその場を後にした。
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