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雅を引き剥がしたかと思えば直ぐさま猛が抱き着いて来てクラス中の視線を浴びると同時に女子のような悲鳴が響き渡る。
雅も流石に驚いたのか目を見開き口を開けて俺と猛のじゃれ合い(?)を見ている。
「何であんなカッコイイ人がオタクに抱き着いてるの~!?」
「あのオタク許せねぇ!」
「俺達の雅姫もさっき抱き締めてやがったぞ!」
悪態と悪口が飛び交う教室の扉が小気味よい音を発てて開かれたかと思うと、ハリセンを持ちこちらへ歩いてくる眼鏡を掛けた遼がどす黒いオーラと笑みを浮かべてこちらへ歩いてくる。
流石の俺でさえこの時の遼の威圧感には何も出来ず、それに気付かず懐いてくる猛の前に来ればハリセンを持つ手を大きく振りかぶり凄まじい早さで振り下ろされた。
俺でさえこの一撃は絶対に受けたくないと思う…切実に。
「ギャォォォォォォンッ!」
「ふふっ…嫌な予感がしたので来てよかったですね」
「…………やり過ぎだ、遼」
「犬は躾が肝心ですから…お昼に迎えに来ますから一緒に食堂でランチしましょうね、昶さん?」
「あっ、あぁ………」
気絶した猛を連れ教室を出て行く遼が去った後、呆然とその光景を見ていた教室の奴らが一斉に奇声を上げた。
俺は額を押さえ小さな溜息を吐くとこれからの学園生活の事を考え不安に苛まれる。
「今の人達、東雲君の知り合い?」
「………一応、ね」
「そうなんだ…明るい人達だねっ」
「後で、紹介する…」
「えっ!?知り合ったばかりなのに…」
「……そんなの関係ないし、気にしない」
「ありがとう、東雲君っ」
「………昶」
「ふぇ?」
「苗字嫌……」
「…あっ、昶君」
「なに、雅?」
「これからよろしくねっ!」
「…うん」
俺の下の名前を呼ぶだけで嬉しそうな雅の頭を優しく撫でては、ほんの少しだけ学園生活が楽しくなるかもしれないって思ったのは秘密だ。
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