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クラス毎に用意されている席に座ると両隣は決まっているとでも言うかのように雅と永二が座る。
背後から物凄い三つ分の視線を感じるが気にしない事にする。
………菖蒲、猛、遼。
どうして変装している俺を簡単に見付けられるんだ?
「これより、始業式を始めますっ!寝ている奴は今すぐ起きないと末代まで呪うからね!」
『今日も可愛いぞぉ!』
『ハルちゃ~んっ!』
「静かにぃ~っ!」
中学生かと言うぐらいに背の小さい童顔の教師が開式宣言すると同時にまたもや嬌声と奇声が上がり俺の堪忍袋の緒が切れ掛かる。
それほどまでに煩いのだということを察してくれ。
肩を叩かれ振り向くと遼が居て一部の人間が恐怖と愉悦、どちらかの表情をしている。
一体何をしたんだ、遼?
「これ、使ってください昶さん」
「これ…」
「耳栓です。新品ですから安心してください」
「サンキュー、遼」
「っ…どういたしまして」
周りに気付かれぬような声で会話をしつつ、手渡された耳栓を交互に見る。
少し眼鏡をずらしつつ微笑みながら礼を言うと、頬を染め視線を反らす遼に首を傾げつつ前を向く。
ちゃんと目を見て礼をしただけなのに一体どうしたのだろうかと思うも、有り難く耳栓をするとそのまま腕を組んで眠りについた。
「あっ、昶君寝てる」
「そうだな~…眼鏡、外してみねぇ?」
「だっ駄目だよっ!」
「ちょっとだけっ!気付かれねぇって…雅も気になんだろ?」
「そっそうだけど…」
「一瞬だけ取るぞ?雅、用意は良いか?」
「うっ、うんっ!」
回りの生徒が壇上に注目してるのを良いことに、寝ている俺の眼鏡を二人が取るという外道な作戦を実行しようとしているのを見た遼がハリセンで二人を叩いたという話を後日菖蒲から聞いたのは言うまでもない。
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