EPISODE.1

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俺は大きな欠伸をしながらゆっくりと目を開けると、両隣に居る雅と永二が頭に×印で湿布を貼り泣きながら押さえているので訳が解らない。 どうやら式も終盤に近いようなので耳栓を外すと周りがざわついている気がする。 「昶さん…確か、学年首席じゃありませんでしたっけ?」 「ん?……一応」 「………そこで式が止まっちゃってるんですよ」 「……………ごめん」 「いえ、理事長がこっちに来そうなので早く行った方が…」 「くそっ、眼鏡外せとか言われそうだな」 「そんな事したら昶さん狙われますよ?」 「え?」 「いえ、こっちの話です。早く行ってください?」 「あぁ………」 鬘な為に痒くても掻けないのが辛い所だが雅と永二の肩を軽く叩いてはゆっくりと立ち上がり理事長の居る壇上脇に向かう。 一年の方は気付いているのだろうが上級生の方は俺が動いている事に気付かない。 そんな事を考えながら壇上脇に来ると理事長と秘書さんの前に立つが……抱き着かれた(理事長に)。 何故だ!? 「昶ぁやっと来たなぁ、おい?」 「ちょっ、離せっ」 「無駄ですね…こうなった理事長は満足するまで離れませんから…」 「はぁ……忍さんも大変ですね」 理事長の存在を無視して秘書である西条 忍さんと話していると首筋に舌が這う感触に目を見開く。 仕舞いにはほぼ強制的に眼鏡を……外されたっ!? まだ忍さんと理事長である羽瀬 辰哉が壁になって見えないから良いがって……何で顔が赤いんだ? 集団風邪でも流行ってるのか?
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