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結局、昨日の夜は猛、菖蒲、藤に送られて家に帰った俺は纏めてある荷物を確認してから眠りに付いた。
大半の荷物は既に寮の方に送ってあるのでこれと言った心配はする必要がないと思って起きたのだが問題発生である。
………………留守中の家の管理があった。
「藤の兄にでも頼むか…。」
小さな溜息と共に上半身裸に下はジーパンという姿のままベッドから出ると、棚の上に置いてある携帯を手に取る。
数件知らない番号から掛けられて来ているが大体が仕事の電話なので無視して藤の番号に電話を掛ける。
『もしもし、どうしたんですか昶さん?』
1コールで出た藤に驚き少し間が空いてしまったがゆっくり口を開く。
「もしもし…確か、お前の兄さん部屋探してたよな?」
『あぁ、覚えてくれていたんですね。そうなんですよ…大学受験に専念したいとかで』
「なら…俺の住んでる家、ちゃんと管理してくれるなら貸すって伝えてほしい。今から藤の家に行く」
『えぇっ!?ちょっ待っ!!』
「じゃあ、後で」
問答無用で通話を切ると所々寝癖で跳ねている髪を梳かしては、愛用の朱色のゴムで一つに纏めると何時も被っている鬘を付ける。
そして、それぞれ色の違う両目を隠す為に黒のカラコンを入れては極め付けに黒縁のレンズの分厚い度無しの眼鏡を掛けた。
今までもこのスタイルで自分の髪や目を隠していたので俺は何となくだが気分が落ち着くようになってしまった。
「出掛ける前に一服しておくか…」
新しい制服に袖を通しつつ呟くと軽く首を鳴らしては荷物を肩に下げ部屋を後にした。
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