849人が本棚に入れています
本棚に追加
2階から階下に降りては人の気配のない空間に何を思うでもなく俺は何時ものようにリビングのソファーに腰掛ける。
荷物の中から煙草とマッチを取り出しては火を点けると、テーブルの上に置いてある灰皿に燃え滓を捨てゆっくりと息を吐き出す。
普段は一日に一本吸うか吸わないかの比率なので一箱を減らすのに二ヶ月くらい掛かることが多く、猛に押し付けることの方が何かと多かった。
「もう7年も経つのか…」
ふと自分の両親の死んだ時の事を思い出し微かに眉を寄せるも、今じゃ顔さえ思い出せない程になってしまっている。
母や父の遺骨と位牌は祖父母に引き取られ残ったのは僅かな保険金とこの家だけ。
生きる為に図書館に行っては勉強をし続け何でも屋を開業した事により俺は此処まで生きて来れた。
「もうそろそろ行くか…」
灰皿で煙草を揉み消しては煙が出ていない事を確認してから立ち上がると、ふと思い出して自宅までの道程を簡単に書いた紙を持ちリビングを出る。
愛車の鍵を持っては玄関で黒い革靴を履くと、そのまま家の扉を開け外に出ると昔から良くしてくれた隣のお婆さんに軽く挨拶してから家の鍵を閉める。
欠伸を噛み殺しては荷物を肩に下げたまま車庫から愛車を出してエンジンを掛けると、朝の少し霞がかった道路を走り出した。
最初のコメントを投稿しよう!