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普段は苦笑しながら見ている遼なのだが今日は少々様子が変な事に気付き俺は首を傾げる。
「どうした?」
「遥兄さんにだけは会わせたくありませんでした…」
「優しそうなお兄さんじゃないか?」
「僕はこれ以上ライバルは増やしたくないんです」
「ライバル…?」
兄に対してライバル心を抱く必要が何処にあるのだろうと首を傾げるも、困ったように笑う遼を見ては小さな溜息を吐いてから時計を見る。
いつの間にか背後から抱き締められた事に気付いては優しく頭を撫でてやる。
何故か、俺を慕う人間はスキンシップが激しいのでこんないきなりの行動にも慣れてしまっていた。
「私も…菖蒲や猛のように名前で呼んでほしいです」
「何だ?藤って呼ばれるのは嫌か?」
「そうじゃないですけど…名前で呼んでもらいたいんです」
「わかったわかった…遼、これで良いか?」
「はいっ!そろそろ行きましょう、初日から遅刻は笑えませんし」
「そうだな…一応特待生で俺は入ったようなもんだしな」
偶然とはいえ仕事でこの姿のまま理事長と会った時にミステリアスな雰囲気が好みだとか言う理由で勝手に俺の通っている中学に試験合格通知送られたからな。
入学金、寮の個室提供という内容に引かれて申し出を蹴らなかったのだが、多分菖蒲や遼以外の生徒からはやっかまれるだろうと感じてはいるが、取り敢えずは思考を中断し学園に向かうことにした。
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