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遼と並んで車道を走りながらたわいない話をしていると、後方の方から聞き慣れた爆音が聞こえたと思えば、寝起きなのか柔らかそうな栗色の毛が寝癖で跳ね淡い琥珀色の瞳を眠そうに擦る菖蒲が来た。
制服も着崩していて菖蒲らしいといえば菖蒲らしいが、学校では優等生を演じていた遼と俺にとっては苦笑を浮かべてしまう。
「やっと追い付いた~!昶さん、俺に~気付かなかったでしょ~?」
「すまない。遼と話してたからな」
「む~、後で~ひざ枕してくれたら~許します~」
菖蒲は無気力なイメージがあるが頭が良く喧嘩も強い。
そのかわり、喋り方は独特で俺に甘えたな所がある為に怒るに怒れない手の掛かる弟みたいなタイプだ。
逆に遼は手が掛からないが拗ねると何を仕出かすか解らないタイプである。
「そ~いえば~、猛なんですけど~…入学出来たって知ってます~?」
「そうなのか?」
「それは初耳ですね」
「昨日の夜に~理事長の所に~許可貰いに行ったらしくて~…。大事な物を奪われたらしいですよ~?」
「大事な物?」
「多分、知らなくて良いと思いますよ…昶さんは…」
「そうか?」
「はい」
「……そうか」
俺は遼を見て首を傾げて問い掛けるも、何故か頬を赤く染めているのを見ては風邪でも引いたのかと思ったが、そうこうしている間に学園に着いたので取り敢えずは単車を降りて押して歩くことにした。
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