一日目

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「史帆ちゃんっ、櫂くんとはどういう関係!?」  今日という日が終わり、寮に戻った史帆に晴菜から唐突に質問された。  部活に入っていない史帆より後に、一足遅れで茶道部から帰宅した晴菜はドアを開けた途端に問いただした。 「櫂?ああ、あいつとは幼馴染だよ」  事も無げに説明する史帆をよそに、晴菜は叫ぶ。 「幼馴染!?」 「ああ。小学校からずっと遊んでた」 「それだけ?」 「何が?」  わけが分からず聞き返す。 「だからそれだけの関係なの!?」 「んー。あ、あと家に遊びに行った」 「そうじゃなくて!ああ、クラスの男子の心境を教えてあげたいくらいよ」  などと先ほどからわけの分からないことをぶつぶつといっている。 「ちょっと、晴菜?何かあった――」 「史帆ぉーーーー」  ばたんっと大きな音を立て、部屋の扉が勢いよく開いた。 「あ、美咲」  突如部屋に突撃、もとい、入ってきたこの少女は草薙美咲。  同じく寮暮らしの友達で、かなりの少女趣味の女の子だ。  部屋はピンクと白一色で構成されており、入るのに史帆としては抵抗のある部屋なのだ。 「ど、どうしたの?美咲ちゃん」  さすがの晴菜も心配そうな面差しで俯いたままの美咲を見つめる。 「か、香澄ちゃんを助けてよぉ」  涙ぐむ美咲にただならぬ不安が胸を過ぎる。 史帆はクラスの中でも『頼れるお姉様』という位置付けをされている彼女はそれよろしく、人が困っていると手を差し伸べてしまう、そういう性分なのだ。  そのため、このようによく人に物を頼まれるし、それを苦にも思ったことは無い。  しかも、運動神経も良く、勉強もできるため、より『頼れるお姉様』の位置付けが定着しつつあるのだ。  また、史帆自身の父親が警察官だったためか、正義感と責任感は父親譲りといっても過言ではない。
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