一日目

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 国語、生物、世界史に体育の午前を終えた、昼の休み時間。  他のクラスはわいわいと教室から出て、購買部や中庭に弁当の席取りを始める頃。  昼の購買部ほどではないが、転校生である櫂の周りにはごった返すような人だかりができ、女子生徒のきゃーきゃーと騒ぎ立てる声が聞こえる。  クラスの入り口付近には他クラスの生徒がちらほらと見受けられた。  朝から昼までの時間でもう噂が広まっているところを見ると、噂というものは案外侮れないのかもしれない。  櫂の机は学級委員長の坂口真人の隣で、史帆の前の席だ。  おかげで机には一歩たりとも近づけない。 その中で質問攻めになっている男、櫂は教室に入ってきたときと打って変わらぬ無表情ぶりだった。 (おーおー、大変ですねぇ)  まるで他人事な史帆は、先ほど買ってきたパンの袋をがさりと揺らす。  晴菜は、茶道部の部室で部員と昼食を取るのが部内の暗黙のルールだ、ということでいつも部室で食べている。  何でも、初代茶道部の先輩が定めた、親睦のためのアリガタイ決まりごとだそうだ。  特に一人で食べることを気にしない史帆は偏見も無ければ、止める気も無い。  と、ここで櫂に動きがあったようでちらりと横目を向ける。  見れば、そこにはがたりと席を立つ櫂の姿が目に入った。  そしてそのまま教室を出て行った。  慌てて史帆も櫂を追いかける。 (あいつには聞くことがあるんだ)  足を踏み出し教室を出ると、後方からは「あーあ、行っちゃった」、「きっと転校初日で緊張してるのよ」、「でも、あのクールな感じがかっこいいわーー」という意味の分からない会話が耳に入ってきた。  最後まで聞いてる暇もなく、恐らくあいつが向かったであろう場所へと足を向けた。  あいつなら恐らく……
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