一日目

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「まあまあ、受身取ったんだしそんな痛くなかったでしょ?櫂」 「ああ、お前は昔から大雑把なところは何一つ変わってないな、史帆」  やっと思い出したみたいだな。 「お互い様だろ、仏頂面」 「……四年ぶりか?」 「たぶんそれくらい」  四年、か。もうそんなに経ったのかと思い返してみる。  四年前、私たちはこの街にいた。  小学校からずっと一緒だった史帆と櫂は、家が近いこともありよく遊んでいたのだ。  櫂の家は町内でも指折りの金持ちで、大きな家――いや、あれはもう屋敷といってもいいくらいだ――の中でかくれんぼをして迷った思いでもある。   櫂の父親は、日本屈指の産業メーカーで、玩具から精密機械までを製作・販売して経営している会社の社長だった。 だが、その櫂の父親の病死により会社は副社長の手に渡り、その莫大な遺産は母親と一人っ子だった櫂の手に収まった。 ちなみに現社長は、櫂の叔父に当たる人間で最も信頼できる人物だそうだ。 その後、母親と一緒に櫂は北海道に引っ越してしまったのだ。 その間に史帆も史帆なりにいろいろあったわけで。 「しかし、本当にガサツな性格はやはり直っていなかったか」
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